日本では、国会議員や企業・公務員の女性管理職が少ないことはよく知られていますが、学校も例外ではありません。学校の管理職が女性なのか、男性なのかという問題は、女性教員の生き方やキャリア形成の問題にとどまらず、子どものジェンダー観、キャリア形成にもかかわって教育的に大きな問題であると考えます。研究では公立高校の管理職に焦点をあて、都道府県ごとの状況にも目を向けながら、女性校長が増えないのはなぜか、制度とインタビューから精査しています。
子どもが学校で何を学ぶのか、このことは、子どもの人格形成上とても大事なことです。なかでも教科は、学校教育の中でも核となるものです。とりわけ幼児期から学童期へと制度的・発達的に大きな移行を迎える時期である小学校の低学年の、教科内容と子どもの発達との関連を検討することは、子どもたちが学校生活の入り口をいかに楽しく充実して過ごすのかという意味において、重要だと考えています。算数・生活・道徳の3教科を中心に、教科の内容と発達の関連から検討を進めています。
東日本大震災は、人々や地域に甚大な被害を及ぼし続けています。とりわけ子どもが被災した場合に、何歳の時に、どのように被災し、どのような困難を抱え、いかなる支援をえたかをふまえ、発達と教育という視点から検討することが、たいへん重要だと考えます。東北の沿岸地方に足を運び、学童保育所ならびに学校の先生方からの聞き取り調査やアンケート調査をもとに、被災後の発達と保育・教育の在り方について長期的な視点に立ち分析・検討しています。原爆を投下された長崎で幼少期を過ごした人々への聞き取り調査も始めました。
障害者権利条約が批准され、共生社会の実現がうたわれています。学童クラブにおいても、障害の有無にかかわらず、ともに遊びともに活動するというインクルーシブな保育の実現にむけて取り組みが進んでいます。障害のある子どもが学童クラブで生活する様子を、観察や先生方とのカンファレンスなどからとらえ、発達像を浮き彫りにしながら発達の経緯を明らかにしつつ個々の子どもの心に近づき、保育への見通しをたてていきます。専任に加え、パートなど様々な労働形態の先生方が子どもとかかわる状況にあって、子どもの発達を科学的にとらえるとはどういうことなのか、先生方への研修もふまえて考察しています。
日本では、雇用における正規・非正規の二極化が進み、経済格差が拡大し、結果的に子どもの貧困率が世界的にも高くなっているという現状があります。なかでも日本は、派遣労働の比重が大きいことで知られています。そうした中、2015年9月に労働者派遣法が改正されました。はたして改正された派遣法によって、派遣社員は安心して働くことができるようになるのでしょうか。圧倒的に女性比率が多い派遣労働者のキャリア形成について、インタビューやウェブ調査などから検討していきます。